1. 2008/10/11 【この青い、世界の下で。】02
  2. 2008/10/10 【L your M】02
  3. 2008/10/09 【閃空輝光】5章14
  4. 2008/10/08 【閃空輝光】5章13
  5. 2008/10/07 【閃空輝光】5章12
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【この青い、世界の下で。】02




「ししょーーーー!!」

 成人を迎えた日も、いつもと変わらなかった。
 町の子供たちに剣を教える。
 その中に混ざる、サージェスを師匠と呼び、弟子を名乗る少年――エリオンが駆け寄った。

「師匠、成人おめでとう!」

「サンキュー。お前もあと二年で成人だな」

「……師匠と酒が飲めるまで、あと二年か。長いな」

「言っておくが、二年なんてあっという間だぜ?」

「よく二十代になればあっという間って言うけど、そーゆーものかな?」

「…………お前もなれば分かるさ」

 時の経つ速さと遅さを。
 嫌なことほど遅く感じ、楽しいことほど光陰矢のごとし、だ。
 今、サージェスは充実していると言える。
 だが、それはあっという間に過ぎ去って行く。
 残るのは、忌々しい過去。
 どうしても拭い去れないモノだけが、ゆっくりと時を刻んでいた。

「それで、師匠。今日は何を教えてくれるんだ? 前回は攻撃の基本が終わったから」

「うーん……そうなれば、防御の基本に行こうかなとは思っていたが」

「ボク、師匠と同じ系統を教えて欲しい」

「スピード重視の、ガード系……か」

 考える。
 子供たちには基礎から、ゆっくり剣に慣れさせる部分から始めているのに対し、エリオンは大人だ。
 癖があるとはいえ、基礎はマスター済み。
 前回――先週は彼にひと通り攻撃の基礎を教え終わり、系統を見出したばかりだった。
 エリオンはサージェスよりも身長が低い。
 が、力はサージェスよりも上。
 同じタイプで教えても構わなかったが、やはり個人の特性に合わせたほうが上達も早い。
 それで基礎を教え分かったのが、エリオンはパワー系の剣士であることだった。
 先陣を切って、道を開いて行く。
 力押しと言ってしまえば、格好が悪い。
 反対に、サージェスはスピードとガード系の剣士だ。
 奇襲をかけるに適したスピードを持ちながら、パワー不足に問題を持っている。
 エリオンと剣を交えれば、経験的には勝るが、力押しで負けてしまう。
 それは力に対し、力で対抗しているからだ。
 どうすればパワー系と渡り合えるか。
 思い出したのは、母親の剣技だった。


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【L your M】02

2 失いはじめる、モノ



 お前は言った。

『あれは、誰ですか?』
 
 お前は聞いた。

『これは、何ですか?』

 失われていく物。
 それがいつで、何を失うのか、分からない不安の中。
 それでも変わらず、お前はお前のままで、そこに居る。
 
 今、これから何を失うのか……。
 神も知らない。

【閃空輝光】5章14

5章:告げる想いと、新たなる展開。 14


「――っ!」

 言葉が、出せなかった。
 いや、消えて行く。
 傷つけた。
 傷つけてしまった。
 誰よりも一番傷ついている人に。
 物理的に、精神的に。
 ――私はっ!
 身体が震えた。

「す、すみません! アナタを責めるつもりはありませんでした。ただ……ただ……」

「何……よ」

「――想いや考えを伝えることは、難しいのです」

 背中を撫でられ、優しく言われる。
 震えていた身体は、徐々に落ち着きを取り戻した。
 まだ顔は上げられないけど。

「でも、もう大丈夫ですよね?」

「…………まあ、ね」

「なら、良かったです」

 袖で涙を拭って、目を開ける。
 地面は夕陽に染まり、影が伸びていた。
 宿屋の方向。
 まるで、この先の行方を示しているかのようで。
 私は、立ち上がった。
 その傷は、残ってしまうかもしれないけど。
 言葉にしないままじゃ、もっと後味が悪いから。

「――アリガト」

「お礼でしたら、仲直りされた後にお受けしますので」

「今は今。それはそれ。別物よ」

「そうですね。では、いってらっしゃい」

 最後にもう一押しされ、歩き出す。
 何よりもまず、最初に言いたい言葉を胸に秘めて……。



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【閃空輝光】5章13

5章:告げる想いと、新たなる展開。 13


「レイさんにも言われました。でも、共感できることは、良いことだと思います」

「……何のよ」

「同じ世界に生きているって、思える所がです」

 はっ――と顔を上げると、黒い髪と茶色の瞳が見えた。
 二十歳と言う、大人になったばかりの、大人の表情。
 自分が大人気ないことをしていると、自覚を促される気分だ。
 実際、そうだけど。
 そこはやっぱり、意地になってしまう部分があった。
 だから私は、大人になりきれない。

「アルスフィルさんは、アナタを信頼しているのですね」

「は?」

「――アナタを信頼しているからこそ、死んだ後の身体も任せる……ということだと思います」

「……聞いたんだ」

「はい。青ざめて、震えていました。あれは間違いなく、恐怖、ですね」

 問いに、答えになっていない答えが返ってくる。
 青ざめて、震えていた?
 恐怖?
 誰が?
 何に対して?
 私が殴ったこと……なのだろうか。

「一番恐いモノは、何だか知っていますか?」

「何って……人が一番怖いのは、死ぬことなんじゃない?」

「いいえ。アルスフィルさんが一番怖いモノは、自分のせいで誰かが傷つくことです」


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【閃空輝光】5章12

5章:告げる想いと、新たなる展開。 12



 平手で頬をではなく。
 拳で、思いっきり。
 一般的に女の力は弱いと言うけれど、全力を込めたんだ、痛みはあるはず。
 殴った私自身も、痛い。
 でも、心の方がもっと痛かった。
 泣きたいほど。
 何故かは分からない。
 人を叩いたりは、人生で一度や二度くらいはある。
 殴ったのは、これが初めて。
 それが、泣きたいほどなのか。
 
 ゴーン、ゴーン、ゴーン。

 気がつけば、夕方を知らせる重い鐘の値が聞こえた。
 陽が長いせいか、まだ夕方とは思えず。
 広場でぼんやりと、行き交う人の流れを見ていた。
 明日になればまた、繰り返される日常。
 だけど明日になれば、崩れてしまうかもしれない。
 霞んでいく視界。
 今もまだ痛む右手を、胸元で押さえ込んだ。

「――ティルシアさん? 宿屋を目の前にして、こんな所でどうしました?」

「………………見て分かんない? 感傷に浸ってるの」

「すみません。お腹が痛くて、具合が悪いのだと思いました」

「…………考え方、アイツに似てるし」


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