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【真紅の絆】01

第1章 死を望む者(1)


 それは、ほんの僅かな隙だった。
 
「危ないっ!」

 誰かが叫ぶ。
 と、同時に動く身体。
 ああ…このまま行けば、終われるのだろうなと、一瞬過ぎる思考。
 振り払う間もなく、飛び込んだ。


 ガタンガタン…。


 電車が通り過ぎる音を、どこか遠くで聞いていた。
 聞こえるということは、生きているということ。
 温もりも鼓動も。
 生きていると、それぞれの形で教えていた。

「ラディ!」

「……生きてるよ。子供も…俺も」

 抱きしめている腕を解く。
 その中には、泣きじゃくる小さな子供が居る。
 親が目を離した、ほんの僅かな隙。
 早く帰りたいのか分からないが、降りた遮断機の下を潜ってしまった。
 危ないと叫んだのは誰だったか。
 見えた瞬間、身体が動いていた。
 このまま飛び込めば、終われるだろうなと思いながら…。

「ありがとう御座います! ありがとう御座います!」

 母親が、何度も礼を言う。
 周りに居た人間は、拍手を贈る。
 感謝という念。
 それが欲しくて、飛び込んだ訳ではなかった。
 欲しいのは、たった一つ。

「あの、是非お礼を」

「…いや、気持ちだけで十分だから」

「それでは私どもの気が」

「…本当に、その気持ちだけでいいから。それより子供、病院へ連れて行った方がいい」

 そう言って、漸く開放される。
 母親の言葉に、思わず本音を言いそうになる。
 深く、溜息を吐く。
 望んでも得られぬ望みを、無関係の人間に。
 それは意に反していた。

「そうやってお前は、死に急ぐんだな」

「…焔樹」

 明らかに怒っている口調と、表情。
 羽野焔樹(えんじゅ)は、死に関して敏感だ。
 それは多分、目の前で両親を失っているからだろう。
 幼き頃、心に刻まれた傷跡(トラウマ)。
 決して癒えることなく、生涯に亘り縛り付ける。

「子供を助けたお前は認める。だけど、助けた動機は認めないからな!」

 最後の言葉はもう、怒り任せだった。
 怒りに任せるまま、同時に物も投げる。

トマトジュース 食塩無添加

 それは、焔樹がキレた証。
 本気で怒り、キレた時に発動する物だった。
 こうなってしまえば、暫くは冷戦状態。
 曲げるつもりも、折れるつもりも、譲る気も、どちらにもない。

「…うぇっ」

 ストローを入れ、飲む。
 濃厚で、味気なさが口内に広がる。
 美味しくないと思うのは、苦さからか。
 それとも、想いの辛さか。
 噛み締めるかのように、全てを飲んだ。
 何度も、何度も。
 この世界には何故、永遠というものがあるのだろうか。
 人とは、刹那の生き物のはずだ。
 刹那だからこそ、懸命に生きる。

「俺はただ…永遠を終わらせたいだけなんだ…」

 数え切れないほど、耐えられないほど繰り返した。
 生よりも、死の瞬間。
 疲れきった心が求めたのはただ一つ。
 この永遠を、終わらせること。
 世界に生きる全てが、望んではならないもの。
 それを終わらせる術が、欲しかったのだ。


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コメント

>古田サマ〜。
 今晩和♪ そうです、新しいファンタジーです。念願の、ファンタジー要素を取り込んだお話です。
…これを作るまで、いくつ設定を没ってきたことか(T_T)
 ゆっくり、マイペースに進めていきますので、きっと逃すことはないかと(笑)
 どうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m
光咲さん!今晩は(^^)v
新しいファンタジー小説誕生でしょうか♪
今度こそ!逃さずじっくり読ませてもらいますね(^^)v

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