200806

  1. 2008/06/30 【閃空輝光】3章04
  2. 2008/06/29 【閃空輝光】3章03
  3. 2008/06/28 腐男子な親友
  4. 2008/06/27 【閃空輝光】3章02
  5. 2008/06/25 【閃空輝光】3章01
  6. 2008/06/24 更新のお知らせ
  7. 2008/06/23 【紡ぐ、想いは遙か…】act.2
  8. 2008/06/22 【キミに送る手紙】 6
  9. 2008/06/21 【閃空輝光】2章34
  10. 2008/06/20 【閃空輝光】2章33
  11. 2008/06/19 【閃空輝光】2章32
  12. 2008/06/18 【閃空輝光】2章31
  13. 2008/06/17 【真紅の絆】12
  14. 2008/06/16 【閃空輝光】2章30
  15. 2008/06/15 【閃空輝光】2章29
  16. 2008/06/14 【閃空輝光】2章28
  17. 2008/06/13 【閃空輝光】2章27
  18. 2008/06/12 【閃空輝光】2章26
  19. 2008/06/11 【閃空輝光】2章25
  20. 2008/06/10 【閃空輝光】2章24
  21. 2008/06/09 【閃空輝光】2章23
  22. 2008/06/09 【紡ぐ、想いは遙か…】act.1
  23. 2008/06/08 【閃空輝光】2章22
  24. 2008/06/08 いつでも側にいるよ(BL)
  25. 2008/06/07 お知らせ
  26. 2008/06/07 【閃空輝光】2章21
  27. 2008/06/06 【閃空輝光】2章20
  28. 2008/06/05 【閃空輝光】2章19
  29. 2008/06/04 【閃空輝光】2章18
  30. 2008/06/03 【閃空輝光】2章17
  31. 2008/06/02 【閃空輝光】2章16
  32. 2008/06/01 【閃空輝光】2章15

【閃空輝光】3章04

3章:刻まれる紋章、二人が行く道。 4


「……で、何があったワケ?」

 ここまで大げさに言うのだから、余程のことだろう。
 多分、私の予想はそんなにハズレていない。
 ケガ人が出ているのが、その証拠。

「シングルマスター様は、この大陸の亀裂部分を知っておられますな?」

「シュディノスの魔王が堕とされた場所。勿論、知ってるわよ。で、何となく察したわ」

「流石に、聡明で居られます。アナタ様に、ランクSの依頼を申し上げたい」

「…………魔物が、出たのね。それも亀裂部分から。で、手に負えずランクはSになったと」

「ご名答です。こちらはご覧の通り、クラスAの方々でも解決できずに……」

「だろうね」

 予想は当たっていた。
 手に負えないのも無理はない。
 普通の森などに出現する魔物は、スライムやゾンビ、強くてゴーレムだ。
 デーモン系は存在するとはいえ、滅多に出現しない。
 今、世界が平和で、光が溢れているからだ。
 それは全大陸一の強さを持つ、フロンティアの魔王が居ないからである。
 この十年、魔物は居ても平和だった。
 でも、何かが崩れてきている気がする。
 あのセイル村での出来事が、キッカケなような……。

「で、状況は?」

 所長を含め、ギルドのスタッフに尋ねる。
 受付嬢が取り出した紙は、目撃情報などをまとめたものだろう。

「現在、低級の魔物が続々と出現しております。倒しても倒して、まるで無限のようです」

「ランクAのワーカーが、アースデーモン(地の悪魔獣)を目撃しました」

「また同時刻、黒いローブ姿の人が北へ向かったのを数名が確認」

「王都から騎士団が派遣されたと連絡がありましたが、到着は未だ……」

「近隣の町や村へは、ギルドのメッセンジャー(伝令)を放っております」

「この事態をランクSとし、この大陸にクラスS以上がいらっしゃると信じ、呼びかけています」


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【閃空輝光】3章03

3章:刻まれる紋章、二人が行く道。 3


 アルスフィルはアルスフィル。
 シャイニーライティングと似た特徴を持っている。
 たまたま同じ色の髪と、片目をしているだけで。
 顔も名前も、姿さえも違う。
 根本的に違うのは、年齢だ。
 十八歳と二十八歳。
 彼が居るなら、今は二十八歳の立派な成人男子になっているはず。
 違うんだ。
 と、頭ではちゃんと理解している。
 ――でも、いざ目の前になると、考え通りにことが運ばないのよね。
 戦術とはまた違うし。
 はぁ……と、ため息一つ。
 気持ちを切り替え、ギルドのドアを開けた。

「どもー。ギルドの宿借りた……い、けど……後回し、した方がいいような気がしてきた」

 いつものように中へ入るが、その足が本能的に踏み出すのをやめた。
 普段は腕自慢の屈強な男や、仕事の依頼人が行き交っているのに。
 今は、ケガをした人たちが集まっていた。
 その中にこの間見かけた顔が居るから、集まっているのはワーカーらしい。
 受付嬢も、滅多に表に出ない所長も、悩んでいる様子だ。

「――っ! シングルマスター様ではありませんか?!」

「げっ! 何もそんな大声で呼ばんでも」

 既に、時遅し。
 みんなが一斉に振り向く。
 僻みもあれば、妬みもある。
 それが私に向けられる、周囲の評価だったりした。
 ヒソヒソと話す声は、無視。

「嗚呼、何というタイミング。ヘヴンズ・エデンに住まいし神に感謝いたします」


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腐男子な親友


 俺には親友と呼べる存在が居る。
 ソイツはイケメンと言う分類に入り、文武両道な男だった。

 ヲタクという点を除けば。

 まあ、俺はヲタクには偏見がないが。
 ただ……ソイツを理解できるかどうかと聞かれれば、できないとキッパリ言う。

 アニメは子供の頃から見ていた、親しんだ物である。
 某青いタヌキ……もとい、猫型ロボットや。
 某あんぱんが空を飛んでいる物など。
 この辺を聞かれれば、何となく理解はできるが。

 ソイツの領域は、異次元だった。

 ネットで調べたが、大抵の男子は『ギャルゲー』や『美少女』物に『萌える』らしい。
 確かに、可愛い女の子だとは思う。
 が、ソイツはこーゆーのを見ていなかった。

 大抵の女子が『萌える』と言う、『ボーイズラブ』という世界に入っていたのだ。

 俺は見た。
 三秒で拒否った

 世の中にはそーゆーのもあるとは知っていたが……。
 現実(と言うか二次元だが)を目の前にすると、どうにも、思考回路がついてこない。
 むしろ、停止。

 親友の趣味だからとやかく言う権利もない俺だが。
 時々、親友を辞めたくなる。
 某腐女子(と言う女性)を彼女に持つ、普通の男性の気持ちが分かった。
 ブログを拝見する度、親近感を持てしまう。

 ソイツを俺の居る世界に戻すべきか。

 絶対に、俺がソイツの世界には居ることはない!

 たとえ、ソイツの部屋にお呼ばれして、大量のBL物を目にしようが。
 PC画面から、某男性声優の…………な、声が聞こえようとも。

 あくまで、俺は親友。
 ヲタクに偏見がないが、ソイツの領域が理解できないだけの親友。


 そんな俺に、危機が迫っていた。


「俺さ、お前のこと好きだぜ」

「あ、そ」

 いつものようにお呼ばれして、BLだらけの部屋で過ごしている時だった。
 BLゲームをやりながら、何か『アイスが食べたい』という感覚で『好き』と言いやがる。
 プレーヤーになりきって台詞を言ってしまうゲーマーも居るらしいが。
 それ、なのだろうか。
 画面は思いっきり十八禁なので見られない。

「で、お前はどうなんだ?」

「どうって……親友としては好きだぜ」

 安心しろ。
 それ以上も、それ以外もない。
 と言う意味での『としては』だ。

「なあ……俺たち、付き合い長いよな?」

「……だからどうした?」

「そろそろ、一線越えないか?


 ぶっ!


越えてたまるか!!

 と言うか、俺にどーしろと?!
 更に、

「で、お前は受けと攻め、どっちがいい?

「は?」

 そ、それはもしかしなくても。
 あれか?
 あれなのか?!

「俺はリバでも構わないし」

「むしろ構うだろ!

「まあ、できれば俺は攻めたい」

 そんなことまで言ってきた。
 チラリ――と、十八禁な画面を見る。


 無理だ!!


やられるかよ!!

「じゃあ、俺が受けでいーや」

よくねーし!!


 果たして、俺は童貞を守れるか?!
           ↑これもどうかと思う。


 続くか?

 

※唐突に、アホな話が書きたくなります。
  BLに理解できる(と言うか素で話せる)我が友(男)に感謝です。

【閃空輝光】3章02

3章:刻まれる紋章、二人が行く道。 2


「それじゃあ、私はギルドに顔を出して、宿の手配をしてもらうとして」

「ボクは少し図書館に。今のうちに精霊への知識を増やしておかないと」

「俺は…………適当に待ってる」

「魔術書とか見なくていいワケ?」

「……この間、見た。けど、光以外の属性魔法が使えない気がした」

「っ! アンタは……」

 まるで、と言うよりは。
 そのまま、と言うのが相応しい。
 人は、得意不得意の属性がそれぞれ持っている。
 だけど、決して使えないわけじゃない。
 私の場合は地属性が苦手だけど、一つくらいは使えた。
 彼は、シャイニーライティングと一緒だというのか。
 それは口には出せなかった。
 知っているのは、私だけだから。

「ティルシア?」

「――ゴメン。何でもない。宿は多分、ギルド御用達だから……この通りを東に行った所ね」

「えーっと、赤い屋根の所か。それなら知ってる」

「何で?」

「そこに泊まろうとしたら、ギルド御用達、ワーカー優先って言われた」

「なんだ。で、アンタは大丈夫なワケ?」

「あ、うん。目印なら分かった」

「じゃ、解散。宿には二人の名前も入れて取ってもらうから」

 と言い残し、手を上げて歩き出す。
 戸惑いは、ここでも現れている。
 振り切るように背を向けて歩き出したけど、どうも心に引っかかってしまい。
 少し、俯く。


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【閃空輝光】3章01

3章:刻まれる紋章、二人が行く道。 1



 テルドの町へ戻ったのは、それから二日後。
 魔力が回復しきっていないアルスフィルと、右腕の痛みが取れてない私と。
 戦力的に、大幅にダウンしてしまった。
 途中で遭遇した魔物は、レイを中心に戦う戦法にしたかったのだが。
 そのレイの主武器が投げナイフなどの飛び道具で。
 結局、接近戦ができるアルスフィルが魔法なしで頑張る戦法にせざるを得ず。
 身体を休める暇がなかった。
 今、そのことで討論している。

「ボクは三日後で大丈夫だから!」

「少し急ぐんでしょ? 二日もあればじゅーぶんだって!」

「案内してくれるティルシアさんが万全にしないと!」

「私はもう万全に近いワケで、変な気遣いしないで欲しいな」

「そんなつもりはないケド。アルスフィルからも何か言ってやって」

「えーっと……とりあえず、休んでから考えた方が冷静になれると思う」

『……あ』

「違うか?」

「……違わないし」

「……あってるし」

 確かに、疲れている時ほど冷静さが欠けてくる。
 なら、一日ゆっくりと休んでしまって。
 二日目の昼までに準備を終えることも、一日かけることも考えられた。
 みんなが平等で疲れているはずなのに。
 彼は精神的に大人だと思った。


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※今日から3章がスタートです。今後とも宜しくお願い致します。

更新のお知らせ

お待たせ…していますかどうかは分かりませんが(笑)

本日(明日?)日付変更後に【閃空輝光】の第3章を開始いたします。

更新速度はこれまで通り、毎日を目指して行きます。

それでは、25日の深夜0時から2時の間に。

【紡ぐ、想いは遙か…】act.2

 その人は、いつもそこに居て見守っていた。

「……そこを見ても、何もない」

「分かっている。だけど、視てしまうんだ」

 キミが、俺を変えてくれたから。
 俺はその人の想いを、紡いで伝えたいと思った。
 たとえ悲しみが残るとしても。
 いつか、思い出にできるはずだから。
 コーヒーを飲みながら、マスターの視えない方を視る。

『あの人のコーヒーは、美味しい?』

 その人が言う。
 悲しさを隠し切れない、優しい笑みで問いかける。

「(美味しいけど、悲しい)」

『そう……』

 声に出さず、唇だけで伝える。
 いつの頃からか、声にせずとも話せると知った能力の一つ。
 キミと居た頃は、それができるにも関わらずしなかった。
 多分、それは間違っていない判断。
 キミは霊。
 けど、確かにこの世界に存在していたから。
 晴夏という、魂が。

「マスター、もう一杯」

「……飲んだら、閉店だ」

「いつも唐突なんだな」

「……お前は分からん奴だ」

「それは初めて言われた」

 キミが言っていた『アナタが、凄く大切だよ』は、今も強く残っている。
 俺がどんな風に見えるかなんて、関係なかった。
 たったそれだけで、十分すぎるほど。
 反則だ――と、真っ赤になった俺が居たんだ。
 この時、キミに居て欲しいと思ってしまった。
 結局、それは誰のためにもならない。
 不安だけが、先にある。
 
「だが、一つだけ分かることもある。お前は、同類だ」

「…………」

 言葉は返さず。
 笑う。
 傷を持つもの同士、分かり合えることもある。
 舐めあうことはしない。
 馴れ合うこともまた、しない。
 笑うのは、そういうことじゃなく。
 そうなんだよという意味。
 
「……閉店だ」

 通じたのか、そうでないのか。
 空になったカップを片付けられ、仕方なしに立ち上がる。
 もう一杯飲んで、キミを想いたかった。

「じゃ、また次の開店に」

 代金を置き、ドアを開ける。

『またどうぞ』

 その人は、優しく微笑んで見送ってくれて。

 俺は少し、泣いた。

 
 晴夏に……会いたかった。


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【キミに送る手紙】 6


 未来を進むキミの隣に、ボクは居ないかもしれない。
 違う誰かかもしれないし、誰も居ない可能性だってある。
 それがキミの選んだ選択だから。

 進んだ未来で、躓いた時。
 キミは後ろを振り返るだろうか。
 もしも振り返った時、そこにボクが居るから。
 たとえ隣を歩いていなくても。
 過去にボクが居て、キミが居て。
 楽しかったあの頃がある。
 振り返り、思い出して。
 そしてまた前が向けるように。
 
 辿り着いた未来が、どんな世界であっても。
 キミなら大丈夫だと信じている。
 ボクの理想論じゃない。
 いつも真っ直ぐで。
 いつも優しくて。
 諦めると言う言葉を持たないキミだから。
 信じられる。
 何にも、誰にも負けない心を持つキミを。

 これから未来へ進むキミに。


 未来がどうか、シアワセでありますように。


 歩み出した、戻れないキミに。

 ボクはただ願うだけ。



【 手紙を、未来へ向かうキミに 】


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【閃空輝光】2章34

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 34


「――ティルシア」

「え? あ、何?」

「…………えっと、何か声をかけなきゃならない気がして」

「はあ?」

「気にしないでくれ。多分、何でもない」

「意味不明だし」

「うーん……心配してるんじゃない?」

「何で?」

「いや、それはボクにも分からないって」

 空気を、あるいは感情を読み取ったのか。
 彼の『気がした』は、結構侮れない感じだ。
 直感、である。
 女でもシングルマスターでもない、ただの人であるティルシアの勘。
 近づきすぎれば、きっと奥底を見られてしまいそうな。
 
「えーっと……」

 アルスフィルと目が合う。

「……何?」

「あ、うん。言葉に不便してる」

「だろうね」

 初対面での会話のような。
 不仲同士の会話に似てて。
 私は彼のことを、名前で呼べず。
 決して、照れているからではない距離。
 そこにあるのは、戸惑うしかなかないという現状のみ。
 胸に手を当て、目を閉じる。
 何かと引き換えに、失ったそのものがあった。
 この先の、これからの旅路。
 私は、伝えることができるのだろうか。
 ――おかしいよね。どうやら、こんなにも不器用になったらしいよ。
 
 次への旅立ちは少し、戸惑う心と向き合う必要があった。


 to NEXT Episode……

NEXT→3章 1

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※漸く2章が終了致しました。
  次回からは3章に入りますが、2日くらい間を頂くと思います。
 3章の予定ですが、一人増えるはず(笑)です。

【閃空輝光】2章33

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 33


「この大陸のここで、間違いないよね?」

「うーん……うん。でもティルシアと会ったのはどの場所だったか」

「ここの西側。で、この北と西を直線で結ぶ間に、小さいけど村があるの。ここね」

「と言うことは、俺はこの村の人に助けてもらったのか」

 地図を指差し、村の位置をトントンと叩く。
 彼は目覚め、助けてもらった最短だろう先がこの村で。
 ここから更に歩き出し、西側から来た私と出会ったのではないかと思う。
 そして、テルドの町に辿り着く。
 でもここは比較的南側に位置する。
 距離は、かなり遠くなる。
 テルドから真っ直ぐに北へ行くことができるなら、距離は縮まるけど。
 北との境目にある、大きな亀裂が邪魔をしていた。
 道は二通り。
 西側へ行き、そこから北を目指すのと。
 一度王都のある最東端を目指し、北へ行く道。
 ここから近いのは、西側だ。
 けど、装備を整えるなら王都側のルート。
 亀裂を超える術は、存在するけど持ち合わせていない。
 さて、どうする。
 そう選択肢を告げた。

「ボクはテルドに行き、西回りのルートを希望するよ」

「アンタは?」

「俺も西だが、結論は任せる」

「あ、そ。じゃあ、西回りで決定ね」

 二人が頷く。
 王都側のルートが選択しにないのは、分かっていた。
 レイの場合、少し急ぐ旅で遠回りは避けたい所。
 アルスフィルの場合、恐らく一度村へ行ってみようという気で選んだのだろう。
 私の場合、亀裂を突っ切って行きたいけど。
 飛び越えるには、風の精霊の守護か、空を翔るペガサス(翼馬)の手が必要で。
 どちらも、今の私にはなかったから。
 消去法で最短ルートを選ぶ。
 王都には行きたい気もあったけど、きっと前に行った時と変わっていないだろう。
 次があれば、行こうかな。
 次があれば……。


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※次のupで2章が終わる予定です。
  明日のupが可能かどうかは、仕事次第ですorz

【閃空輝光】2章32

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 32


 腕試しをするのに、エルフの村を選ぶだろうか。
 たまたま選んだにしては、説明がつかない。
 ここには強固な結界があるし、村への入り口はたった一つ。
 海からやって来た――とは考え難い。
 そうなると、前者の考えは消え。
 何かの手始め、だろうか。
 けど、何の意味があるのか。それが分からなかった。
 魔王の復活。
 と、考えるなら説明ができるだろうけど。
 時の預言者の預言を知っているのは、私と、おそらくクリムゾンの二人。
 誰かが知る要素は、今はまだないはずだから。
 状況を確認するとは言ったものの、これが限界だった。

「さて、と。これからどーしようか。レイを水の精霊に会わせるつもりだったけど……居ないし」

「じゃあ……他に居そうな場所に心当たりは?」

「あー……メルフォード大陸」

「行きたくないって」

「だろうね」

 世界の中央であるフロンティア大陸の北側、メルフォード大陸。
 そこは雪と氷に閉ざされた、極寒の地。
 確かに、水や氷の精霊が数多く存在するけど。
 温帯大陸で育った私たちには、一秒で滞在を諦めるほど寒い。
 特に、エンダー大陸の人は。
 凍傷なんて、序の口。
 行くとするなら、炎系の精霊からの加護が必要だろう。
 元々、行く気なんてないけど。
 となれば、残る考えは多分一つ。

「あとは……アンタが最初に目覚めた湖、かな」

 アルスフィルを見る。
 意図を察してか、持っていた地図を広げた。
 湖はここから反対。
 彼が当初向かおうとしていた北、最北端だった。


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【閃空輝光】2章31

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 31


 ――な、に……?
 時の遡りは終わった。
 なのに、未だに両手を広げたまま。
 虚ろな瞳で、どこか遠くを見ていた。
 まだ、時を視えているかのよう。
 右目の金色が、揺らぐ。
 左目の青空が、私の姿を映した。

「アンタ、大丈夫?」

「…………ティル、シア」

「そう、私。分かる?」

「…………俺、は……何かを知っている。俺は、自分を思い出さなきゃ、きっと後悔する。だから!」

「だから、なんだ。だから、落ち着かなきゃさ」

「あ……」

 焦ったら、取り戻せないかもしれない。
 だからこそ、落ち着かなきゃならないんだ。
 レイも『うんうん』と頷くけど、彼も人のことは言えないって分かっていないし。
 それでも、私一人の説得よりは力強い味方だ。

「とりあえず、現状の確認。それから対策を立てて、行動する。オーケイ?」

「……ん。おっけーだ」

 小さくだけど、親指を立てて突き出す。
 今は、これで最善。
 落ち着きを取り戻し、改めて状況を確認する。

「シーデーモンを召喚したのは、黒ローブの人で、結界も通じていない――で、間違いないね?」

「ああ。その後の行方は分からない。目的も」

「世界征服とか?」

「するなら、王都を狙うでしょーが」

「あ、そっか。となると……他に考えられるのは、何?」

「それが分かればね。単なる腕試しか、何かの手始めにここを襲ったとしか、考えられないかも」


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【真紅の絆】12

第2章 心傷を抱える者(6)


 歩きながら、トマトジュースを飲む。
 もし隣に焔樹が居たならば、『歩きながら飲むな』と一括される。
 行儀が悪い、と。
 今更だろうと言いながら、飲むのは止めない。

「ほら、買って来たぞ」

 保健室に入り、同時に飲んでいたパックを捨てる。
 証拠隠滅。

「さんきゅー」

「少し、顔色がよくなったな」

「…単に、目を逸らしているだけだよ」

 そう言って、野菜ジュースを口にする。
 目を逸らすことでしか、立ち直れない自分に嫌気がしている。
 気分は、分からなくはない。
 ただ、そうしなければ心を保てないと言うならば、何も悪くないはずだ。
 人は理由付けて、心を正常に保っているのだから。
 現実から逃げるよりは、数倍もマシだろう。

「…ボクは一生、この傷を背負って生きて行くんだ。そうでもしないと、潰れてしまう」

「そうか…」

 強いなと、感じる。
 それは、生きる力の輝き。
 人の持つ、最も綺麗な魂の輝きだった。
 天の者は無機質で。
 魔の者は闇の中に。
 この魂も、闇だ。
 闇だからこそ、闇に生きて消えて行く。

「でも」

「何だ?」

「ラディスが居てくれたことが、唯一の救いだったよ」

 だが、光が差し込んだ。
 言葉に胸が痛むのは、罪悪感からだろう。
 残していくこと…か。

「だから…死に急ぐお前は許せない」

「……だろうな」

 救った者だからこそ。
 普段はほとんど口にして、本音を言うことはない。
 言うのは、その行為に対しての非難と否定。
 こうして、焔樹という人を知って行く。
 最終的には、知りすぎてしまったと思うほどに。
 生かされている…と言うべきだろうか。
 ただ一人の人間に。

「時々…思うよ。そんなラディスが何で、ボクを助けたんだろうって」

「…それは……俺にも分からない」

 あの日、あの時。
 何故、助けたのか。
 自分の起こした行動が、分からなかった。
 いや、理解できていないと言う方が正しい。
 本能のままとった行動。
 そう言ってしまえば、全てにカタが付くのだが。
 永遠と同じく、探してしまう。
 ないだろう、答えを。

「ボクは、ラディスを家族だと思っているよ。大切だ」

 その言葉は、全てを知っても言えるだろうか。
 
 恐怖すら抱かず…。


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【閃空輝光】2章30

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 30


「え?」

 人なんて見えない――と言う前に、人らしき形がユラリと現れる。
 どうやら彼が先に見た光景が、微妙な誤差で私たちに見えるようになるらしい。
 次の場面が現れ、彼は先に見える光景を告げていく。

「……結界は、破られず…………闇が、集い……生まれ」

「――召喚したっ?!」

「え、な、何?! ボクにはさっぱり状況が」

「あとで説明するから、ちょっと黙ってて!」

 意識を、空間に集中させる。
 現れた人の形は、全身を真っ黒なローブで覆っているため正体は分からず。
 空には海側を守るための結界が見えたまま。
 その内側に、シーデーモンが召喚された。
 これが、ことの元凶。
 目を疑った。
 人が魔を召喚できるはずがない。
 なら、その人の形をしたのは一体何なのか。
 魔を生み出せるのは、魔の王――つまりは、魔王のみで。
 その魔王が人の形をとるなんて、聞いたことがないし、伝承にもない。
 夢だろうか。
 目を擦ると、歪んでいた空間が、元に戻り始めた。
 その途中、シーデーモンと戦う私たちが見える。
 残念ながら、私が倒れたその後は見られなかったけど。
 現実であると、告げていた。

「……精霊の力って、凄いな。ボク……加護を受けられるかな?」

 レイが呟く。
 私は答えない。
 精霊の力、加護の力。それは誰よりも知っている。
 身体への負担とかじゃなくて。
 重さ、に。
 目を閉じる。

「――あの人を…………どこかで、知っている気が……します」

 潮の香りと共に運ばれた、アルスフィルの声。
 思わず考えをやめ、目を開けた。


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【閃空輝光】2章29

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 29


「ま、いいわ。それで、どうやって時を視るの?」

「いいんだ? いいけど。ポチがこの空間に干渉して、その場所だけ時を遡ってくれると言っている」

 同時に、彼が着るロングコートの装飾部分からポチこと、時の森の案内役が出てきた。
 時の森に居る精霊の一種。
 ただの案内役で、それほど能力のある精霊じゃないと思っていたけど。
 どうやら、時に干渉できるほどの能力を持っているらしい。
 気づいて契約したのか。
 ――多分、偶然だ。

「へぇ〜、凄いなこの犬」

 撫でる。
 アンタも犬言うのか。
 ポチ、イコール、犬じゃないのに。
 でも、何も言うまい。
 疲れる。 

「ともかく! さっさとやってみる!」

「分かった。ポチ、頼むぞ」

 彼が言うと、ポチは天を仰ぎ吠える。
 のは、私たちには聞こえない。契約者だけに聞こえる、特殊なもの。
 吠え続けるポチの、その周りの空間が歪んでいく。
 アルスフィルは目を閉じ、両手を広げる。
 何となく、『おいで』という仕草に似ていて。
 時を遡り、視える光景全てを受け入れようという意味か。
 意図を理解できないまま、歪みは広がり。
 ある光景で、それは止まった。
 海が、荒れていく。
 シーデーモンが現れる、その瞬間だった。

「…………人が……視えます……」


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【閃空輝光】2章28

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 28


 と、気づく。
 私は、彼の名前を口に出していったのは、たったの二回だった。
 レイに紹介する時と、迷っている彼に答えた時と。
 一度も、呼んでいない。
 口に出したのは、『アンタ』だった。

「分かった、じゃあ、アルスフィルにティルシアさんでどうかな?」

「何でティルシアは『さん』?」

「えーっと、何となくそれが相応しい気がして。それに、呼び捨ての許可を貰ってないし」

「あ、そっか」

 ポンッと手を打つ。
 別に許可を出さなくても、その人をどう呼ぶかはその人次第。
 アルスフィルなんか、いきなり『ティル』と呼び。
 訂正しても『ティルシア』と呼び捨てだった。
 図々しいと言うか、馴れ馴れしいと言うか。

「で、話がかなり外れてるから戻すけど。ここに何か手がかりになりそうなのは?」

「うーん……この見える範囲じゃ、ないって言えると思う。だから、どうしようかなと」

「どうしようかって、アルスフィルには何か考えがあるのか?」

「考えと言うか、ポチが教えてくれたんだが、時を遡って視たらどうかって」

「ええっ?!」

「な、何?」

「ポチって、旅しながら犬飼ってたんですか?!」

「って、驚くのそっち?!」

 レイの感覚は、さっぱり分からない。
 おかしいのは向こうのはずなのに。
 私がおかしいのかって、疑いたくなってきた。
 きっと、二対一だから。
 凹む。


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【閃空輝光】2章27

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 27


「す」

『す?』

「素晴らしすぎるよ、アルスフィルさん! どーすればそんな能力が?!」

「違う違う。コイツのはきっと、視力が悪いせいだと思うよ?」

「それでも凄いよ。アルスフィルさんの光系魔法よりも驚いた」

「いや、あの……とりあえず、その『さん』ってのをやめてくれないか? 何か……かゆい」

 ポリポリと、腕を掻く。
 親しげにしている人からの『さん』付けほど、慣れず、居心地が微妙なものはない。

「何で? えーっと、ボクは十七歳だけど」

「俺は………………多分、十八歳」

「私は――って、女性に歳なんか聞かないの!」

「そう考えると、『さん』付けは妥当な礼儀かと」

「世間一般常識ではね」

 でも、彼の場合はどうだか。
 十八歳と言うのは、あくまで『自称』だから。
 本当はもっと幼かったりすることも、可能性としては否定できない。
 そう、いくら外見が大人に見えようとも。
 逆に、子供に見えようとも。
 実際は、分からないものなんだ。

「俺のことはアルスフィルか、そうだな……アルスで構わない。ティルシアも、だ」

「……私は別に」


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※次に使う魔法を考えるのが楽しい今日この頃です。いくつか出来上がってます。それは追々。
  【閃空輝光】を書き進める傍ら、新たなファンタジーに挑戦中。公開はかなり先です。

【閃空輝光】2章26

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 26


 凄く嫌そうな顔で、最初に散々文句を言ってから話したのだろう。
 村人に何かを聞く前に。
 最初から話してしまえば、関わるのは一人だけで済む。
 多分、そんな所だろう。
 そしてアルスフィルに話したのは、この三人では彼が一番話しやすい『無害』だから、か。

「一応、水の精霊に会おうとしていたから、来れば分かるかなと思って来たんだが」

「さっきのネガティブな考えをしてしまった、と」

「うん。海を見ていたら、夢のことを思い出してしまって。考えないようにしてたんだが……」

 困った表情で笑う。
 レイは何も言わず。
 私はもう一回蹴ってやろうかとも思ったけど。
 話を、ユリスが言っていたことに戻す。

「この結界、張り直されたのか?」

「らしいね。新しく作っても強固なのは、自慢するだけのことはあるわね」

「俺にはどれくらいが強固なのかは分からないが、凄いとだけは分かる」

「ふーん。それで、右目は何か視たの?」

「視えていたら、苦労はしないさ」

「……あの〜……ボクだけ蚊帳の外っぽいんだけど」

 戸惑いながら、質問と片手を挙げる。
 ああ、そうかと納得し、アルスフィルの特徴を軽く説明した。
 その右目は目には視えない物が視えている。
 この村の精霊も、常に視え続けて。
 なんて、レイにも信じられないのだろう。
 ハトが豆鉄砲を喰らった表情――が、どんなのかは知らないけど。
 驚いた表情をしたまま固まった。


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【閃空輝光】2章25

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 25


「…………かなり、痛かったりする」

「痛いって思う場所を狙ったからね。で、どお?」

「……うん。痛い」

 届くか届かないかの、微妙な位置の背中をさする。
 痛いのはもう分かった。
 聞きたいのはそんなんじゃなく。

「もう一回、蹴る?」

 にこやかに、告げた。
 足はもう、蹴る気満々で。

「遠慮したいと思うのは、間違いじゃないらしい。うん…………ありがとう」

「それでいーのよ」

「…………随分と乱暴な」

「こーゆーのは、少し強引に行かないとね」

 同じ気持ちになっちゃダメだし。
 優しくしても無駄だから。
 多少乱暴でも、きっとこれが最良で最善だと思う。
 十年。
 私は、自分に乱暴だった。
 立ち上がり、歩かなければならないから。
 折れそうな心を支える、今、最善だと思った方法。
 大丈夫だ。

「それで、絶対安静のアルスフィルさんが何故ここに?」

「うーん……言ってしまえば、何となくだけど。少し、気になる話を聞いたから」

「気になる話? 誰から?」

「あのユリスってエルフ。海側の結界は強固で、水の精霊が守護していると言っていたから」

「でも実際はシーデーモンが現れた」

「その通りだ」

「……あのユリスがねぇ」


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【閃空輝光】2章24

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 24


 それは、自分への問いかけ。
 私は、答える。

「アルスフィル・ウィグエアーズ。誰でもなくて、誰かでもある。アンタは、アンタじゃない?」

「…………それで、いいのだろうか?」

「何か、思い出したワケ?」

「……眩しいほどの、存在。だけどその人は、俺じゃない別の名前を呼んでいた。だから俺は」

 ここに居るのは、本当に俺なのだろうかと呟く。
 答えは、ない。

『それが今のアナタの名前です。この先で記憶が戻っても、これもアナタなのですから』
 
 時の預言者が言っていたことを、今の彼に言っても通じないかもしれない。
 迷っている。
 怖がっている。
 記憶が戻ったその先の、心の在り処は。
 別の名前を呼んでいたとと言うその人の視線の先。
 そこに居るのは、ここに居るアルスフィルなのか。それとも……。
 もしかしたら、彼の中にもう一人の彼が眠っているのかもしれない。
 記憶喪失になることで、新たな人格が形成される。
 よくある話だった。
 それでも、思う。
 出会ってまだ数日だけど。
 だけど、私が出会ったのは間違いなくアルスフィルなんだって。
 きっとこの先で、同じ顔の違う彼にあっても、あれはアルスフィルだって言える気がした。

「ねぇ……蹴り飛ばして良い?」

「え?」

「うりゃっ!」

 ――ドンッ!

 返事を待たず、背中を蹴る。
 何となく、そんな気分だったから。
 今より、昨日までの彼が彼らしいと思ったし。
 これからも、何かを思い出す度にこうなられちゃ困る。
 私なりの、『元気を出せ』という意味だったりした。


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【閃空輝光】2章23

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 23


 開けられるドア。
 入ってきたのは、やっぱり嫌そうな顔をしたエルフの自警団の、リーダーだった。

「おい。お前らの仲間が出たぞ」

「は?」

「お前らの仲間が起きて、海に向かったと言っている」

「言っているって……全然言ってないし」

 出たぞ、で全てを察しろと言う方が難しい。
 ノックは丁寧だけど、言葉は足らず雑。
 見事なアンバランスだ。

「お前も目覚めたなら、行け」

「あーはいはい。言われなくても」

 出て行くし。
 元々広げてはいない荷物を持ち、民家を出る。
 そこは海からは程遠い、村はずれの場所。
 何でわざわざこんな場所にするのか。
 理解に苦しむ所。
 今日はゆっくりと、海に向かう。
 あの時は余裕がなくて、村に目を向けることはできなかった。
 数年ぶりに見る、人の村と変わらぬ家々。
 けどその下には、何年も生きているエルフが住んでいる。
 昔から、ずっと。
 グルリと四方を見渡せば、物見の塔が建てられている。
 侵入を見張るためと、村に結界を張るための建物。
 村が平和なのは、そのおかげで。
 畑を耕す姿が見える。
 もしもあの時、ブレスを防がず避けていたら……。
 挑んだのは、間違いじゃないって思えた。
 ゆっくり、ゆっくり。
 海に辿り着く。
 潮風が、香りを運ぶ。
 アルスフィルが、儚げに見えた。

「――俺は…………誰なんだろう?」


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【紡ぐ、想いは遙か…】act.1


 ふと、歩みを止めた。
 
「……珍しい」

 その喫茶店は、大学へ続く道の途中にあった。
 今日は珍しく『OPEN』になっている。 
 思わず呟いていた。
 普段なら『CLOSE』のまま。
 いつ通っても、その看板がひっくり返ることはなく。
 
 カラン、カラン――

 ドアを…開けていた。
 
「…………っしゃい」

 コーヒーの匂いが漂う、薄暗い空間。
 マスターは、初老の男性だった。
 とりあえず、カウンター席に着く。
 メニューは……コミックスを横にしたサイズ。
 軽食が少しと、コーヒーと紅茶系が数種。
 ジュースはオレンジとコーラ、ジンジャーとカルピス。

「ブレンドと、フレンチトースト」

「……豆は?」

「マスターのオススメで」

 注文を言うと、黙々と作業に入る。
 ゆっくりと豆を引く、機会じゃない音。
 目を閉じる。
 浮かぶのは、キミのことばかり。
 一ヶ月、二ヶ月と時は過ぎ。
 それでも、色褪せることはない。
 俺の中の時も、止まったまま。
 キミが、俺のほとんどを占めているんだ。
 また出会えた時、話そう。
 キミの知らない時間を過ごした、俺を…。

「……どうぞ」

「え、ああ…ありがとう」

 はっ、と気づいた時には、注文したコーヒーとフレンチトーストが出されていた。
 時の流れが早く感じる。
 キミの分まで、刻んでいるかのよう。
 それなら嬉しいと思う反面、止まって欲しいと思う。
 想いながら、コーヒーを飲む。

「あ……」
 
 寂しい、気がした。

「…何か?」

「あ、いや…美味いコーヒーだなって」

「…変わり者だな」

 言うと、それっきりだった。
 怒っている訳でも、嬉しい訳でもなく。
 俺に背を向けて、洗い物を始めた。
 寂しいと感じたのは、どうやら間違いではなさそうだ。
 マスターも、誰かを失っている。
 そういう人だから、俺には分かってしまう。
 悲しみだけで、生きている存在。
 キミなら、手を伸ばすだろうか。
 と、コーヒーが空になってしまった。

「マスター、さっきのブレンドをおかわりで」

「…………相当な変わり者だな」

 新しく入れられたコーヒーも、寂しい気がした。
 多分、何杯入れても変わらない味。
 それを飲める俺は、同じだからだ。
 
 もし、悲しみが消えたのなら…この味は、どうなっていくのだろう。

 空になったカップに、思った。


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※漸く進み出しました。
  まずはキッカケから。オムニバス形式は、もう少し先になります。

  【閃空輝光】は今日の午前中に更新予定です。

【閃空輝光】2章22

2章:新たな出会い、二人の戸惑い。 22


 彼と出会うことは預言で、こうなることもきっと、預言に入っているだろうから。
 そこに意志がない気がした。
 だから、だ。

「あ、そー言えば。今更だけどアナタたちの名前は?」

「え? あー……してなかった?」

「ボクがしたあと、クリムゾンさんの話で興奮して、聞き損ったな〜ってさっき」

「そうだったね。じゃあ、改めて。私はティルシア。あっちはアルスフィル・ウィグエアーズ」

「ティルシアさんとアルスフィルさん。覚えた。よろしく」

 差し出される右手と、握手を交わす。
 これで出会い、関わりができた。
 と、なると。
 次は、光の高位精霊を探す旅だろう。
 時の預言者に向かっても、今は会えない。
 向こうが呼び、あの場所を守る空間を空けない限りは。
 魔王はいつ復活するのか。
 知る術は、空に闇が現れるその時。

 コンコンッ――

 と、ドアがノックされる。
 アルスフィルは寝込んでいるなら、あとはエルフしか居ない。
 でも、エルフが人間に会いに来るなんて、到底考えられないし。
 迷っていると、レイが答えてしまった。


NEXT→2章 23

活力です↓ どうかお分けくださいm(_ _)m
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いつでも側にいるよ(BL)



「アナタは、いつもそこに居ますね」

 とても悲しいことがあった時。
 とても嬉しいことがあった時。
 誰かに何かを話したいと思ったら、アナタはいつもそこに居てくれた。
 まるで分かっ