崩壊世界ヘ十題
- 2008/02/11 【崩壊世界ヘ十題】06
- 2008/01/09 【崩壊世界へ十題】05
- 2007/12/24 【崩壊世界ヘ十題】04
- 2007/12/21 【崩壊世界ヘ十題】03
- 2007/12/19 【崩壊世界ヘ十題】02
- 2007/12/17 【崩壊世界ヘ十題】01
【崩壊世界ヘ十題】06
欲しいものがあるとするなら、たった一つだ。
元の世界を、還してください。
夢を見た。
懐かしい、あの世界。
今は旧時代となってしまった、俺たちが本来生きていたはずの時間。
世界はどうして、崩壊してしまったんだろう。
誰が悪くて、誰も悪くなくて。
みんなが、同じ罪を背負っている。
「あ、起きてましたか。具合はどうですか?」
「……割と、最悪かもしれない」
「いい夢を見ていらっしゃったように見えましたが?」
「だから、最悪かもしれないんだ」
夢は、現実の裏返し。
いい夢だとしても、現実を見れば打ちのめされて。
激しく、辛く。
そして、悲しさだけが残る。
「夢を見ない私たちには、残念ながら理解できないことです。すみません」
「俺は逆に、彼方たちが羨ましいよ。出来るなら、夢を見ないまま生きたいさ」
「…未来を……夢見ずとも?」
「だって、その方が楽だろ?」
その方が楽だって、思い知ったから。
夢は夢。
現実では決して叶わないもの。
「お前…見損なったぜ」
「俺もこの世界の現実に、見損なったよ」
そう言って、笑う。
暮瑠の表情に、怒りが表れたのは言うまでもない。
他に、出せる表情が思いつかなかったから。
「お前は、俺たちの希望だった。お前が見損なったなら、この世界はもう…無理だな」
「…では、私たちはどうすればいいのでしょう? プログラムには何もありません」
「それを、絶望って言うんだ。彼方、俺たちは欲しても、絶望しか得られないのさ」
吐き捨てるように、真実を告げる。
俺も、彼方も暮瑠も、みんなも世界も。
欲しいものは何一つ得られず。
欲しくもない絶望ばかりを受け取るしかなく。
もう…諦めるしか、道はないのかもしれない。
諦めたら、楽になるのなら…。
何も望まず、ただ終わりを待とう。
「……欲しても望んでも、どんなに頑張っても、俺には代価がないんだよ」
世界は変えられない。
変えられるだけの、力がない。
熱意は灯火で。
希望は儚くて。
それは、つり合うだけのモノがないからだ。
けど…。
もしも、こんな俺でも叶う願いがあるのなら、たった一つだけ欲しいものがある。
元の世界を、還してください。
俺の命に、代えてもいいから…。
06 欲しいのはただ一つ
【崩壊世界ヘ十題】

【崩壊世界へ十題】05
無鉄砲に飛び出して、24区まで走ってきた。
持っていたのは、たった一本のペットボトル。
500mlの水を差し出して、薬と交換してくださいと叫んだ。
雨の中、走ってきた道を戻る。
途中、彼方が立っていた。
傘を持って、多分ずっと。
「……薬…貰えなかった。500mlじゃ…一人も救えないって…」
聞かれてもいないことを、独り言のように呟く。
言わなければ泣き出しそうで。
言っておかなければ、現実を認識できない。
「アナタの、誰かを救いたいという熱意は…残念ですが、この世界では灯火程度です」
それは、身をもって知った。
降り注ぐ雨よりも、ずっと心に突き刺さる。
絶対零度の、凍てついた心。
溶かすことはもう、叶わないのか?
「俺は…本当に何も出来ないんだな」
「……っ」
返ってくる言葉はなく。
当たっているのだから、返ってこないのは当然だ。
目の前で倒れた人を、助ける術を持たず。
薬一つも取ってこれない、なんと無力な人間だろう。
雨が無情に降り続ける。
止まず、冷え切った身体。
きっと、こうやって心も冷えて凍って行く。
「……帰る」
歩き出す足取りは重く。
心は何の感情も出さず。
もしも、この心が凍てついてしまったら。
一体、誰が溶かしてくれるというのか。
誰にも溶かすことが出来ないから、この世界は凍てついた心ばかり…。
05 凍てついた心
【崩壊世界ヘ十題】

※前回更新時、タイトル部分の話数が間違っておりました。
正しい数字に変更しましたことを、ここにご報告致します。
【崩壊世界ヘ十題】04
「どうして助けないんだ?!」
目の前で、人が倒れた。
顔は青ざめて、息苦しそうにしているのに。
誰も手を差し伸べることもしなかった。
倒れようとも、見向きもしない。
同じ土地に住んでいる、家族のようなものだと思うのは俺だけらしい。
肩を貸し、地下へ戻る。
一応、医者のような存在は居るが、実際には当てにならなかった。
処置が、出来ないのだ。
手術が出来ず。
見て、薬を出すだけ。
「こうなればもう、助からない」
「何で?!」
「……これに効く薬がないんだよ。薬品関係は24区にしかない」
「取りに行けばいいだけだろ?」
「なら、お前は24区全員の水を運べるか? コイツ一人の命のために、俺たちの命の水を!」
「それは…」
それは、答えられない問いだった。
人の命は、天秤にかけられない。
救うために、何かを犠牲にするなんて真似は、出来なかった。
それは、この世界では甘い考えだと、誰もが言う。
「向こうも同じだ。一人のために、24区全員の命を繋ぐ薬を分ける。出来るか?」
「……出来ないと、思う」
一粒、分けたとしよう。
俺たちの一人が助かった。
けど、向こうにも病人が出て…。
分けてもらった一粒が、その病人に行き渡るはずだった分だとしたら…。
出来ない。
俺たちの持つ、浄水システムの水も同じだった。
「そうだ! 彼方たちなら」
「奴らは、命に関しては平等だ。今のように、命のやり取りには干渉出来ない」
「……人じゃ、ないから?」
「ああ。奴らにとってこの死は、自然のものだからな」
医者みたいなその人が教えてくれた。
彼方と暮瑠。
二人は、命に関わる行動はしない。
仮に、薬を持って来てもらったとしよう。
向こうに死人が出たら、彼らは狂うと言った。
自分の行動で、生き残らせるべき人間を失ってしまったと。
プログラムされているコマンドが、ショックで壊れる。
そうなってしまえば、この17区の浄水システムは、誰が守るのだろう。
誰も守れず、奪われ…。
俺たちは、生きて行けない。
「分かったのなら出て行け。そして、自然のものだと受け入れろ」
それは、強制的なものだった。
目の前で倒れたあの人は、薬があれば助かるだろう命で。
今、終わりへと向かっている。
自然なこと。
摂理からは外れていない。
だけど…。
俺は走った。
ただひたすら、限られた時間を走って行く。
命は、失う前なら取り戻せる。
取り戻せないものは、時間と過ぎ去った過去だから。
俺は取り戻したい。
たとえ、取り戻せないものになってしまっても…。
04 取り戻せないもの
【崩壊世界ヘ十題】

【崩壊世界ヘ十題】03
荒れた大地を耕して、俺たちは生きようとしていた。
一日の僅かな時間。
全力で、世界を変えていこうとする。
崩れた残骸を寄せ、荒れた大地を耕し。
整備した土に、種を蒔く。
それを幾度となく繰り返しているが、未だに成果が出ていない。
人は、いつか諦めてしまう。
この世界は、新しい命を育むことはない…と。
「お前、諦めが悪いとか言われないか?」
「ないね。潔いとは言われるけど」
「ふーん」
暮瑠の目には、諦めた人の姿ばかりなのだろう。
俺は諦めた訳じゃない。
諦める時は、スッパリと諦めるタイプだ。
そうしないのは、俺がここに存在できる理由がないからだ。
頭がいい訳じゃない。
ただの普通の人間が、冷凍睡眠で生き残っている。
罪悪感…だろうか。
ここに居るのが俺じゃなくて、頭のいい誰かなら、少しは変わっただろう。
そんな感じだ。
だから俺は、諦めることをせず。
ひたすらに、残骸を片付け、大地を耕していく。
「ぐっ…お、重っ!」
木を差し込み、テコの原理で瓦礫を寄せて行く。
一つ寄せるのに、どれくらいかかったのだろう。
とうとう、力尽きて大地に倒れた。
空が、灰色。
大気が汚れている証拠だ。
目を閉じて、空気を吸い込む。
懐かしさは…感じなかった。
「やっと、見つけました。こんな所に来ていたのですか」
「こんな所?」
「はい。ここはまだ汚染が強いです。植物も育ちません」
土を手に取り、さらさらと落として行く。
この土じゃダメなんだと、無言で語る。
けど、目はまだ諦めていない。
370年という時間を過ごしてきても。
「行きましょう。もうすぐ、限界です」
「あ、もうそんな時間か」
立ち上がった瞬間、風が吹き、振り向く。
何故振り向いたのか、分からなかった。
だけど、後悔はしていない。
寧ろ、希望を抱いた。
「花、だ」
世界は、まだ生きている。
必死に生きようとしていた。
たとえ大地が汚染されていようとも。
瓦礫に埋もれても、命は続いていく。
03 瓦礫に埋もれる命
【崩壊世界ヘ十題】

【崩壊世界ヘ十題】02
世界に残った人々は、僅かな資源を争いで奪い合った。
『第17地区を、紛争と認知』
「また…ですか」
彼は、深いため息を吐く。
人と人との争いを、人でない彼が止める。
世界は、歪んでいた。
「17地区って、何があるワケ?」
「水です。17地区は浄水システムがあり、争いが耐えません」
「ふーん。それって、旧時代でいうとどの辺?」
「……ここ、です」
だから、ため息が出たのだろう。
水は生きるためには必要不可欠だ。
彼は教えてくれた。
生まれたのは地上調査のためだが、今はこの浄水システムを守るためにあると。
争いを止めても、また争いが起こる。
それは、多分…彼が管理しているからだろう。
この世界は、誰のものでもない。
だが、いつの頃からか人の物になってしまった。
俺も、その内の一人…だ。
「で、システムはどの辺?」
「それは…」
「それはお前でも、教えられない」
背後から、声がした。
振り向くと、彼に似た顔をした、全く違う人が立っている。
いや…彼も、人じゃない。
「お前が悪いヤツじゃないのは、データで分かる。だが、それとこれとは別だ」
「暮瑠(くれる)」
分かっていた。
俺も、人だから。
いつシステムを奪いに行っても、おかしくない。
そう思われても、仕方ないと。
「文句は紛争を抑えてからだ。行くぞ、彼方」
「…はい、すみません」
二人が走る。
その背に、重さを感じた。
俺も、みんなも、気づいているのか。
それとも、目を逸らしているのか。
こんな世界にしてしまった、その罪。
今も、刻み続けている。
響く銃声。
崩れる世界。
遙か昔から、途絶えることを知らない争いは…。
02 途絶えない争い
【崩壊世界ヘ十題】

【崩壊世界ヘ十題】01
目覚めると、そこは荒れ果てた世界だった。
「俺…は?」
「アナタはこの土地でちょうど、50人目に目覚めた人間です」
そう言われて、俺が冷凍睡眠組であったことを知る。
世界の一部は、冷凍睡眠で保存され、生き残り。
世界のほとんどは、地下で生活して…残らなかった。
望んだ訳じゃない。
ランダムに選ばれた、ただの偶然。
記憶には、そう残っていた。
「今…いつ?」
「人が暮らせるようになって、まだ10年。あれから370年経ちました」
「…アンタは?」
「人ではありません。地下に残った科学者が、地上を調べるために私を作りました」
「…その、地下の人は?」
「……汚染された大地は、地下にも影響を及ぼしました」
つまりは、生き残っていない。
世界にはもう、冷凍睡眠の人間しか残って居ないと彼は言った。
その人たちも、まだ全員が目覚めていない。
思う。
目覚めなければ、幸せなままだろうと。
「外を…見てみますか?」
「出られるのか?」
「時間が限られていますが」
連れられ、部屋を出る。
薄暗い廊下は、階段になり、上へ伸びていた。
天へ、上る道。
俺が最後に見た世界は、青く、澄み切って。
滅ぶなんて、嘘だと思った。
明日もこの空が続く。
そう思って眠ったあの日。
「これが、今の世界です」
目覚めた世界は、絶望だった。
「…あれから、370年。世界はずっと変わらず、時を止めたままです」
人が生きて行くには、あまりにも悲しすぎる。
何もない。
笑顔も、夢も、全て。
「…何で…こんな世界を…」
みんなに、託したのだろう。
俺たちはこれから、この世界で生きて行く。
全てがなくなり、残されたのは絶望だけの未来。
01 残された絶望未来
【崩壊世界ヘ十題】

※突発的に書きたくなり、お題を自作しました。
内容は後日にでも公開予定です。









