遙か、紡ぎ行く想い

  1. 2008/07/07 【遙か、紡いで来た物語】(外伝)
  2. 2008/04/17 【遙か、紡ぎ行く想い】act.25(完)
  3. 2008/04/16 【遙か、紡ぎ行く想い】act.24
  4. 2008/04/15 【遙か、紡ぎ行く想い】act.23-3
  5. 2008/04/13 【遙か、紡ぎ行く想い】act.23-2
  6. 2008/04/11 【遙か、紡ぎ行く想い】act.23-1
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【遙か、紡いで来た物語】(外伝)

このお話は、完結致しました【遙か、紡ぎ行く想い】の番外編です。

【紡ぐ、想いは遙か…】がまだ始まったばかりなので、今回はこちらの外伝という形になりました。

単品でも読めますので、続きからどうぞ。


【遙か、紡いで来た物語】

【遙か、紡ぎ行く想い】act.25(完)


 ドアを開けると、カランカランと綺麗な音がする。
 喫茶店によくあるベル。
 毎日のように鳴らしていた。

「いらっしゃい」

「…違和感、全開」

「いい加減、慣れろ」

 鳴らしても、その先には違和感を感じてしまう。
 彼が微かに微笑んで、『いらっしゃい』と言うのだから。
 表情より、ちゃんと仕事している姿に、だ。
 慣れないのはきっと、見た目も含まれた。

「で、今日は何にする?」

「気分はレモンかコーヒーだけど、やっぱり抹茶」

「…どんな気分だ」

「まったりしたい」

 そんな気まぐれな注文でも、彼は応えてくれる。
 入れてくれる紅茶もコーヒーも美味しい。
 実の所、何でもよかった。
 彼の入れるお茶は、種類関係なく心が落ち着くからだ。
 だから、飲みたい種類は気まぐれ。

「ねぇ…」

「何だ?」

「えーっと…」

 戸惑う。
 それは、聞きたいこと、話したいことがありすぎるから。
 どれから話そうか。
 どれから聞こうか。
 言葉が一度に出そうで、戸惑う。

「時間はある。まだ歩き出したばかりだからな」

「え? あ、うん。そっか…じゃあ、ゆっくり聞こうかな」

「ああ。ゆっくり進もう。これから、だから」

 時間は、進んでいる。
 早く感じる人も居るだろう。
 だけど、彼との時間はまだ進み始めたばかり。
 ゆっくり、ゆっくりと。
 聞きたいこと、話したいことを満たすには十分すぎるほど。
 焦る必要は、どこにもなかった。
 
「で、どこから話してくれる?」

「そうだな…まあ、少し気恥ずかしい気もするが」

 ふっ、と考え込んだのは一瞬。
 彼の中で、話す順番は決まっていたらしい。
 
「晴夏から遙に続く、紡いだ想いを話そうか」

「それってどの辺り?」

「この話は、キミが消えたあの日から始まる」
 
 それは、彼の優しさと悲しさの物語。
 目を閉じて。

 遙かに続く明日へ、ここから一つずつ、想いを紡ぎ行く。

 ゆっくりと、二人で…。


 END


 and NEXT Episode…

  HONなび

【遙か、紡ぎ行く想い】act.24


 ここに居るのは『遙』だけど。
 彼を覚えている『晴夏』も、確かに自分だった。
 生まれ変わって、生まれたら、探すと約束をして。
 またね、と。

「…って言うか、全然変わってないし」

「性格がか?」

「いや…見た目とか、見た目とか」

「そうか? 自分では分からないが」

 振り返って見た彼は、夢のまま。
 正確には、夢とまったく同じだった。
 時を刻んでいない。
 多分、表現するならその言葉がピッタリだ。
 それは、きっと…。

「もしかしたら、生まれ変わったキミと、同じ時を進むため…なのかもな」

「…前向きだね」

「だが、これでいい。俺だけ先には進みたくなかった。多分、ずっと悲しいままで居た」

 彼は言う。
 これは神様がくれた奇跡の一つだ。
 生まれ変わったこと、めぐり合えたこと。
 そして、同じ時を歩めること。
 年齢は進んでしまったけど、姿がそのままなら、同じに進めるだろう。
 だから、前向きでも誰のせいでもない。
 奇跡なんだ、と…。

「あのさ…こうやって会えておきながら聞くけど…これから、どうするの?」

「どう、とは?」

「えーっと…この町で幽霊の悲しみを、また紡いで行くのかなって」

「いや、今の俺は、悲しみだけで生きる存在ではない」

「…つまりは、必要ないってこと?」

「望まれない限りは」

 答えは、あやふや。
 でも、はっきりした答えもあった。
 彼にはもう、悲しさは必要ないということ。
 今はちゃんと、喜びも楽しさも必要としているのだろう。
 あれから十六年という時が流れた。
 それは知らない時間。
 知らなくて当然だけど。
 少し、寂しい気がした。
 でも…やっぱり、同じだ。

「じゃあ、これからは?」

「この町で就職先が見つかった。だから、これからはキミの側に居たい。望んで、いいか?」

「いいに決まってる。だって、やっぱり同じだった」

「何が?」


「生まれ変わっても、アナタが好きだってこと」


 記憶はあるけど、心は違うかもしれない。
 だけど、同じだった…同じだと言える。

 紡いできた想いがここにあり、『はるか』を形成しているのだから…。


  HONなび

【遙か、紡ぎ行く想い】act.23-3


 来月、喫茶店をオープンする。
 学校から商店街、町のほとんどが当たり前のように知っていた。
 どんな感じと聞かれても、内装はまだ完成していない。
 どんなお茶があるかなんて、経営する人に聞いて欲しい。
 もっとも、経営者は誰なのか分からないが。

「口コミって怖い…」

 チラシは作っていないらしい。
 新聞の広告は、オープン前に出す予定。
 今、こうして広まっているのは、近所が発信源の口コミ。
 噂話の広がりよりも、ある意味怖かった。
 
「こうやって、本人ですら知らない話が広がるんだね」

 誰にでもなく呟く。

「って、何言ってんだろ」

 まるで、隣に誰かが居るような。
 ずっと、居続けてくれたような…。
 そんな懐かしさを感じた。
 とても、とても。

「 」

 唇が、言葉を紡ぐ。
 音にはならないその言葉は、確かに名前を紡いでいた。

 『紡』と。

 そして、何故か泣いた。
 会いたくて、会いたくて。


 記憶が…想いが…甦る。


「キミとの想いが、ここから紡がれていくことを…」


  HONなび

【遙か、紡ぎ行く想い】act.23-2


 学校へ行く前、家の前から見てみる。
 元は車庫があった所。
 面影は、大きさだけだけ。
 今、工事は内装作業に取り掛かっていた。
 来月開店と言うのは、本当だ。

「…で、どーするのさ」

 父さんは、売れているライター。
 母さんは、看護師の資格を持っているが、今は休業している。
 一体、誰が経営して行くのだろう。
 それより、何より。
 何で喫茶店なのだろうと言う問題だ。
 初めてその話を聞いた時、それほど家計が危ういのかと思った。
 けど、現実はそうでもなかった。
 収入は安定している。家は元々ある。
 経路が、まったく分からない。

「遙」

「何? どうかした?」

「…いえ、気をつけて行きなさい」

「あのさ…もう十六になるんだけど」

「…そうでしたね」

 きっと、感傷的になっているのだろう。
 今朝に見た夢。
 父さんにとって、どれだけのことなのか。
 大切な人を失った悲しみは…まだ理解できない。
 そんな風に思っていたのが多分、表情に出ていたのだろう。
 父さんが、笑った。
 笑って、

「では、いってらっしゃい」

「うん。いってきまーす」

 見送った。

  HONなび

【遙か、紡ぎ行く想い】act.23-1


 と、そんな夢を見た。
 こんな出来事、覚えがない。
 いや、身に覚えがないのは、当たり前だ。
 『はるか』は、別の人。
 十六年も前に亡くなった、父さんの妹だ。
 何故、夢に見たんだろう…。

「おはよ〜」

 フラフラしながら、階段を下りる。
 キッチンには既に、父さんが来ていた。

「…はる、か?」

「は? いや、あの…父さん?」

 一瞬。
 ほんの一瞬だけ、酷く悲しそうに見えた。
 呼んだ名前は多分…。

「…ああ。おはよう御座います、遙」

「どうかした?」

「いえ…今朝は少し、懐かしい夢を見ました。もう十六年も経つのですね」

 懐かしむ表情の父さんは、夢で見た姿と同じだった。
 とても優しくて、温かくて。
 だけど、側に居たあの人は…もっと温かかった。
 その彼は今も、『晴夏』を想っているのだろうか。
 なんて、気にしても仕方ない。
 『晴夏』と『遙』は、別人なのだから。
 夢に見ても、だ。

「あ、そうだ」

 そんな空気を打ち破るかのように、母さんが話し出した。

「前々から話したて喫茶店だけど、来月には開店できるから」

「…ちょっとと言うか、かなり待って。あれ、本気だった訳?!」

「本気だから、話したし、こうやって改装してるじゃない」

「…母さんの、新手のジョークかと思ってた。改装は車庫だと思ってたし」


  HONなび

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