閃空輝光

  1. 2008/10/16 【閃空輝光】5章19
  2. 2008/10/15 【閃空輝光】5章18
  3. 2008/10/14 【閃空輝光】5章17
  4. 2008/10/13 【閃空輝光】5章16
  5. 2008/10/12 【閃空輝光】5章15
  6. 2008/10/09 【閃空輝光】5章14
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【閃空輝光】5章19

5章:告げる想いと、新たなる展開。 19


 あとは、神様くらい。
 だけど、人が、ヘブンズ・エデンに至る術はただ一つ。
 輪廻を辿る、その瞬間。
 答えを聞くために、死んだら意味がない。
 人知を超えてたとしたも、人は人で。
 人以上になれる人なんて、居ないんだ。
 裏切らない限りは、だけど。

「――ティルシア、俺」

「何よ?」

……襲われてる気分だ

襲うかーー!!

 ドスッ! 

 盛大に叫んで。
 盛大にツッ込んだ。
 鳩尾に、一撃必殺。
 カエルが潰れたような声が聞こえたのは、多分気のせいじゃないので無視。
 顔が熱いのは決して、断じて、紋章が刻まれた身体を見たせいではない。
 全力でツッ込んだせいである。
 絶対に、そうだから。

「か……かなり、痛かったりする」

「うっさい! 自業自得よ」

「うっ……そうか。でも」

「でも、何?」

「――ティルシアになら、襲われてもいいと思う

思うなーーー!!

 ゴスッ!!

 アルスフィル。
 彼の思考回路と視力を、心底疑った。
 ――私を女だと分かっていての発言なんでしょーね?
 だったら、もう一発殴るけど。



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【閃空輝光】5章18

5章:告げる想いと、新たなる展開。 18


 見間違いだと思ったのは、夕陽の色のせいだと思った。
 だけど、それは見間違いじゃない。
 右目が……金色と青色が混ざり合っている。
 溶け合いそうで、互いが奪い合うような混ざり方。
 ――紋章はっ?!
 
「え? ちょ、ティルシア?!」

「黙ってなさい!」

「あ……はい」

 面倒だと、その服を一気にたくし上げる。
 目の前に現れた紋章は、最初に見た紋章から、少し変わっていた。
 どこがと聞かれても、どう変わったかなんて、正直、はっきりとは分からない。
 ただ、直感的に思ったのだ。
 同じようで、どこか違う。
 刻まれている模様ではなく、その意味と言うか、内容と言うか。
 ともかく、変わっている。

「どうか、したのか?」

「――それが分かったら、悩みはないわ。アンタ、身体が動かない他は?」

「特に異常はない。記憶も相変わらずだ」

「じゃあ……一体……」

「俺には何が何だか」

「それ、私の台詞」

 自分のことは、自分に聞け。
 それでも分からなかったら、誰に聞けというのだろう。
 きっちりした明確な答えなんて、この世界に存在するとは思えない。
 時の預言者は、預言だけ。
 天の声は、世界の言葉だと言っていたから。


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【閃空輝光】5章17

5章:告げる想いと、新たなる展開。 17


「……どうしてなんだ?」

「だって……アンタ、笑うと思うから。そんな表情は、苦しくなるだけだし」

 嫌でも、アイツを思い出してしまう。
 笑って居なくなった、心の苦しさを。
 アルスフィルも、相棒と同じ種の人だと思うから。
 最後の瞬間はきっと……笑顔。
 『幸せだ』と笑って逝くほど、残された人は辛く思う。
 ――私は今、笑えてる。だけど、それが幸せとは限らないんだ。
 心の半分が、なくて。

「――死んでも、死ぬんじゃないわよ」

「……いや、それってかなり無茶で無謀な話だと思う」

「知ってる。無茶でも無謀でも、無茶して無謀になって欲しい。大切な……な、仲間だから」

「……俺、大切なのか?」

「そ、そうよ悪い?」

「…………いや……ありがとう」

 夕陽に照らされた笑顔。
 今度は胸が締め付けられることはなかった。
 それは、本当の笑顔だと言うことだろう。
 私は、手を伸ばす。

 ピクリッ――

 触れる手前で、止まる。


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【閃空輝光】5章16

5章:告げる想いと、新たなる展開。 16


「何で?」

「…………アンタね」

 多分、無自覚なんだろうけど。
 本当に、やっぱりアルスフィルなんだ。
 
「とりあえず、最初に殴ったことにゴメン」

「何で?」

「――このっ!」

 思わず、蹴りそうになる。
 白々しい方がマシだと思うのは何故だろう。
 何だか、だんだんアホらしくなってきた。
 もしかしたら、それも彼の計算の内だったり?
 疑ってしまうほど、微塵も感じられない。
 だから余計に、ゴメンと思う。
 本当に……。

「……あのさ」

「ん?」

「――アンタを埋める気はないよ。だって…………悲しい、じゃない」

「ティルシア……」

 呟きは、悲しさを含んでいた。
 望んだ答えじゃないのは知っている。
 だけど、私が思った理由を、きちんと話さなければならない。
 誰のためでもあって、自分のためでもあるから。

「私はね、アンタの死ぬ瞬間なんて、見ないよ」


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【閃空輝光】5章15

5章:告げる想いと、新たなる展開。 15



 レイの話では、戻ってから部屋に閉じこもってしまっている。
 一応、声をかければ返事はあるらしい。
 そんな所でも律義にならなくてもいいのに。
 
 ――コン、コン。

 控えめに、ノックする。

「………………どうぞ」

 そこはやっぱり、アルスフィルだ。
 どうぞと言うことは、ドアは開いていると言うこと。
 別に完全に閉じこもっている訳でもない。
 返事があれば、いつでも入れる。
 心は、まだ閉じられていないと思ってもいいのかも。
 ゆっくりと、開ける。
 西側のアルスフィルの部屋は、鮮やかなオレンジ色で染め上げられていて。
 彼はベッドに横たわっていた。
 何だか気だるそうに、手足を投げ出している。

「……具合、悪いの?」

「いや…………身体が、上手く動かないんだ。何て言うか……よく、分からない」

 顔だけこちらに向ける。
 声は割と平気そうな印象を受けるが、その姿と一緒にしてしまえば、そうでもない。
 リュークが様子を『恐怖』と言っていた。
 恐怖で身体が動かないとは、よくある現象だ。
 そう……なのだろうか。

「……大丈夫、か?」

「それ、私の台詞なんだけど」


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【閃空輝光】5章14

5章:告げる想いと、新たなる展開。 14


「――っ!」

 言葉が、出せなかった。
 いや、消えて行く。
 傷つけた。
 傷つけてしまった。
 誰よりも一番傷ついている人に。
 物理的に、精神的に。
 ――私はっ!
 身体が震えた。

「す、すみません! アナタを責めるつもりはありませんでした。ただ……ただ……」

「何……よ」

「――想いや考えを伝えることは、難しいのです」

 背中を撫でられ、優しく言われる。
 震えていた身体は、徐々に落ち着きを取り戻した。
 まだ顔は上げられないけど。

「でも、もう大丈夫ですよね?」

「…………まあ、ね」

「なら、良かったです」

 袖で涙を拭って、目を開ける。
 地面は夕陽に染まり、影が伸びていた。
 宿屋の方向。
 まるで、この先の行方を示しているかのようで。
 私は、立ち上がった。
 その傷は、残ってしまうかもしれないけど。
 言葉にしないままじゃ、もっと後味が悪いから。

「――アリガト」

「お礼でしたら、仲直りされた後にお受けしますので」

「今は今。それはそれ。別物よ」

「そうですね。では、いってらっしゃい」

 最後にもう一押しされ、歩き出す。
 何よりもまず、最初に言いたい言葉を胸に秘めて……。



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