【閃空輝光】10章03 

10章:二人の歩む道、辿り着く場所。 3


「いや、無理」

「…………………………………………って、出て来れたじゃん」

「いや、ツッコミだから」

 などと言いながら、姿を現す。
 やっぱり、と言うか。
 パターンなのか。
 アルスフィル・ウィグエアーズ。
 ゼロと一緒に依頼を受けていたはずなのに。
 
「――アンタ、何でここに居るワケ?」

「魔王に挑むため」

 さらりと言われた。
 何でそうもあっさりと言えるのだろうか。
 まるで、他人事のように。
 怖さも何も、含んでいない口調だった。
 記憶が戻りつつある中で、感情が壊れてしまったのではないかと思うほど。
 私の決意を、鈍らせる。
 このまま一緒に……なんて、考えてしまうじゃないか。
 それを避けるために、一人で行くんだ。

「ティルシアにはまだ未来がある。クリムゾンさんは未来が少ない。どちらも大切だと思った」

「はあ? いきなり何、ソレ? 未来があるのもないのも、アンタも一緒でしょーが」

「…………違うんだ。多分、俺には未来はない。だから、未来がある人たちの代わりになれたら……」


10章 2←BACK / NEXT→10章 4

  にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ 

【空の守護者】35 




 その声は、街に響く――

 世界は今、オワリへと向かっています。
 <空の王>は、我々を見放しました。
 もはや、祈りを捧げても無意味なのです。
 <空の王>は何故、我々を見放したのでしょう?
 古よりの伝承、世界のバランスを崩す存在が生まれたからです。
 それは、第一王位継承者。
 彼は王族に生まれながら、魔力を持たない異端の存在です。
 現在は第二王位継承者が国政を行っているため、つかの間の平和の中にあります。
 ですが近い将来、必ず破滅するでしょう。
 第一王子から、王位継承の紋章が消えない限り、世界はオワリへと向かい続けます。
 我々の祈りは今、<空の王>ではなく、第二王子へ捧げるべきです。
 これは天よりの、救済の言葉。
 ワタシは預言し、世界に伝えましょう。

 ヴェールで顔は隠されているが、その者の容姿は美しかった。
 高貴とも思える預言者は、何度も同じ言葉をくり返す。
 まばらに行き交う人々が、次第に集まり始めた。

「――つまりは、遠まわしに第一王子を殺せ……ってことだね」

 右肩を押さえ、ラル・ラウトは呟く。
 そこには王位継承の紋章が刻まれていた。
 今の彼にとっては、消えて欲しいと願う忌々しい証。
 隠している限り、正体が明かされる心配は少なかった。

「世界が不安定な今だからこそ、こんな手に出たのでしょう」


34 ←BACK / NEXT→ 36

登場人物  用語集
  にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ 

【閃空輝光】10章02 

10章:二人の歩む道、辿り着く場所。 2



 紡ぎあげた呪文を、繰り返し確認する。
 禁呪は使えない。
 だから、研究した。
 そして、生み出した。
 私だけの、オリジナル。
 フレイムエクスプロージョンよりも、上位。

「赤き、湧き上がる源は、降り注ぐ陽の燃えゆく炎…………」

 ここで試し撃ちもいいかもしれない。
 後ろから、気配が一つ。
 立ち止まり、目を閉じる。
 風の精霊が教えるのは……。
 ――はぁ〜。
 ため息を吐き、唱えていた呪文を消す。
 打ち消した代わりに、別の呪文を唱える。
 ――何でこうなるんだか。

「フレイムアロー! ちぇすとーーーー!!」

 ボンッ――

 少し鈍い音。
 ヒットしたワケじゃなく。
 外れて、地面に当たった音。
 避けやがったのは言うまでもない。
 何でこうなるんだか。
 振り返り、私の後をつけると言う命知らずな輩に言った。

「一秒で出て来い!」


10章 1←BACK / NEXT→10章 3

  にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ 

とある出来事 

とある出来事


 携帯電話の充電が切れ、仕方なしに公衆電話を探す。
 とある商店街の一角。
 案内板を見れば、果てしなく遠くに感じ。
 辿り着いてみれば、虚しさを感じた。
 自動販売機の横に、ポツンと置かれている。
 ――レトロっつーか。
 緑色ではなく、ピンクっぽい色をした、カードも使えない番号を回すタイプ。
 今では公衆電話自体少なくなったが、このタイプはもっと少ないだろう。
 この場所ができた当初の物だろうか。
 取り替えられることなく、存在しているのは天然記念物に近い気がする。
 受話器を取ると、独特の音が鳴った。
 ふと、あることに気づく。
 ポケットを探る。
 右から左。
 左から後ろへ。

 な、い。

 財布がなかった。

ぐおぉぉーー!

 悔しいので、唸ってみた。
 余計虚しくなったのは言うまでもない。

「……交番、行くか」

 事情を話せば、電話を『タダ』で貸してくれるはずだ。
 そして、『タダ』で送ってくれる可能性も出てくる。

 だけど、だ。
 だけど、ラッキー要素はあっても……この足取りは限りなく重かった。
 何だか、悲しいくらいに。


※半実話(笑)

  にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ

【閃空輝光】10章01 

10章:二人の歩む道、辿り着く場所。 1



 私はこう見えて、嘘つきだったりする。
 嘘と言っても、ヒトを騙したり貶めたりする嘘は言わない。
 ただ、平気で本心を隠すという意味での、嘘つきだ。

「さて、と……行きますか」

 案の定と言うか、王都での仕事はなかった。
 みんなが揃いも揃って、真面目に、どんな小さな仕事でも請け負ってしまったからだ。
 新規の仕事を待つのも、一つの手段だったけど。
 確実に仕事が入るとは言い切れないし、また同じようなことが繰り返されるだろう。
 そう結論に達し、テルドの町まで戻ってきた。
 北の亀裂へ近い町でもあるし、この大陸で次に大きな町でもあったから。
 戻ることにした。
 戻って、みんなはそれぞれ仕事をしている。
 三人を除いて。
 リコルとリオルは村が心配だと戻ることを決意し、その二人をクリムゾンが送っていった。
 残ったのは五人。
 ワーカー初心者のゼロには、同じくクラスAながら初心者のアルスフィルが組むと言う形で。
 レイとリュークは、それぞれで仕事をする。
 私は隔離された部屋に入り、偽装した。
 ランクS以上の仕事はない。
 それをあるかのように見せかけるため、所長に一つ頼みごとをしたのだ。
 私に、ランクSの仕事を請けてもらった。
 聞かれても、『守秘義務があるため、クラスS以下の方には教えられません』と言うこを。
 シングルマスターの権限を持って、頼んだ。
 クリムゾンのことを最悪だと思っていながら……。
 でも、仕方ないんだ。
 これは、私の問題だから。
 そこにアルスフィルも関係している(らしい)けど、正直、これ以上は一人で行きたい。
 決意、だ。
 そして、ケジメでも、ある。

「…………さよなら」

 次に会うことは……もうない、ね。



9章 36(終)←BACK / NEXT→10章 2

  にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ